続ゲテモノ屋
お、今日は結構素直だな。
反応がいいのは、一度自分が抱く側になり、余裕が出たからなのか。
奴の弱いわき腹を逆なでし、さっき噛み付いてしまった肩にほんのちょっと歯を立てる。
あんなに暗い目で
「噛み付きたい」
と言っていたのに、とうとうこいつはしなかった。
こっちは思い切り噛み付いた分、かなりひどいことも覚悟していたんだが。
俺の下、腹の辺りで奴が反応してぴくっと動いた。
さっきつけてしまった歯形をゆっくり舐めると俺の背中に腕が回り、反応したものをこすり付けられる。
本当に元気だな。
今日はよほど変なものばかり食べてきたんだろうか。
触って欲しいんだろうがそのまましばらく耳や首の辺りでじらし、すがる腕の力が増したところで
「やっぱりだめか?」
と肛門をノックしたが
「それは嫌だ」
と目が据わる。
頑固だな。
まあ確かに男同士は準備が面倒くさいので仕方ない。
そのまましたこともあるが、サック越しにでも何かにあたるんじゃないかと心配している節があったし、やはり嫌なんだろう。
じゃあ今日は。
両膝を抱えてぎゅっと一まとめに持ち上げたら
「な、何だ」
と驚いている。
「素股、いいだろ」
と言うと
「何だそれは」
と言う。
やっぱり知識が偏っているな。
確かに男を女の代わりとして使うなら肛門が一番だろうが、普通のゲイカップルは準備が面倒だし体の負担がきついので普段は素股や手で、という奴らも多い。
俺たちは一緒に暮らしているわけではないし、何しろ頻度が少ないので会った時には念入りに準備するのだが。
体育座りのように膝の下で手を組ませ、離さないよう言って、自身にジェルを塗る。
「こうするんだよ」
と奴の膝を合わせた状態で腿の付け根に突き立てる。
「ひゃ」
と声がしたのは、俺の先端が奴にヒットしたから。
そのまま激しく動かすと、感じるのかもどかしいのか、足先をばたばたさせて顔を真っ赤にしている。
結構重いんだからそんなに暴れるな。
下に枕でも敷けばよかったかな。
俺もこういうのは初めてなのでちょっと勝手がつかめなかったが、もう少しではぜる、というところで奴から
「待った」
が入った。
こういうところで我慢させるな。
こっちも気持ちいい思いさせろと思いつつも、普段見せない不安そうな顔にほだされて一応動きを止めると
「お前がいってからでいいから、俺、もう一度いいか。なんかこれ、本当に女になったみたいで嫌だ」
とポーカーフェイスが破綻して、ちょっと泣きそうな顔が透けて見える。
ああもう。
こいつは本当に厄介な奴だ。
音を立てて頬にキスし
「お前、我がままだぞ」
と言って動きを再開。
奴の腹にぶちまけた。
動くとたれそうな気がするからだろうが、硬直して動けなくなっている奴を見ると、ちょっと凌辱したような気分になる。
最後に奴が手を離して足を開いてしまったため、腹どころか胸からあごにまで飛び散ったのだ。
ほんの少しだけ雄の征服欲を満たして、でもこれからすることを考えるとちょっと悲しい。
「おい、ティッシュ」
とじれて手を出す奴を尻目に自分のほうだけ始末をつけ、サックの袋を破る。
「お、おい」
とあわてるのを
「動くとたれるぞ」
とけん制しながら固いままの奴のに装着。
ぬめったものは目の前にたんとあるが、自分の精液を使うのも嫌でジェルを出してその上からたらす。
俺の方、さっきしたんだから大丈夫・・・じゃないかな。
念のため、奴の上に伸ばしてべとべとになった手を後ろに回して軽くほぐしていたら、ごくり、とあからさまにのどを鳴らす音がし、薄目で見ると奴が顔を赤くして俺の手元を凝視していた。
ちょっと恥じらいがなかったかな。
まあいい、こいつ相手だし。
奴の上にしゃがみこみ、かするかかすらないかという所で止まり、動揺を抑えようと努める。
俺、できるだろうか。
こいつに言われるがままに抱かれるのが何となくしゃくでこんなこと始めてしまったが、騎上位って下から楽しむもので、決して自分が乗る側にはならないものだったからな。
それでも深呼吸して下を向くと、俺以上の緊張と期待に張り詰めた奴がいた。
「お前、俺の匂いが落ちない位かけてやろうか」
とわざと下卑た口調で挑発したのに
「うん」
と素直にうなずかれて、困る。
お前、こういうときだけそんな風に素直になるの、やめろ。
そういう風にされると、俺は嫌だと言えなくなる。
「お前、自分のを支えろ」
と指示して、そろそろと腰を落とす。
ん。
力を抜いて、ほらこんなのさっきも入ったんだから。
そんなことを自分に言い聞かせつつ、でも乱暴でも入れられるのと自分で入れるのでは精神的なダメージが違う。
肉体的には楽なくらいだが、今の自分の姿を想像すると気持ちが萎える。
でも、奴にもさせていることだしな。
尻が奴の手にぶつかったところでいったん止まり、呼吸を整えなおす。
奴の手が俺の尻に回り、結合部に触れながら
「大丈夫か」
と聞く。
薄い所に神経が集まっているものだから、体のバランスが崩れて腰を落としきってしまい、目をつぶってやり過ごす。
なじんだところで薄目を開けると、すぐ目が合った。
ずっと俺のことを見ていたのか。
一瞬そらそうとして止める、勝ち気な目。
でもそらすのをこらえるとき、ほんの少し頬の赤みが増す。
少し動いてやるとちょっと顔をしかめて、でも気持ちよさそうだ。
「どういう風に動いて欲しい?」
と聞くと、余計に赤くなりながら
「お前のいい風に」
と言われ、ちょっと動揺。
リードを取る形にはなっているが、俺自身もこんなこと、経験があるわけないのでどう動けばいいかわからない。
でも俺以上に神妙になっている奴をほぐしたくて、奴の腹に残る俺の残滓を胸まで伸ばしてみる。
むっとする匂いが余計に充満したはずだが、鼻が馬鹿になっているらしく、もうそれほど気にならない。
ぬれた手で乳首に触ってやると、嫌がって身をよじろうとする。
「たれちまうぞ」
と言いつつ続けると、奴の動きが俺の体に伝わって、微妙に快感がある。
俺の雰囲気が変わったのに気づいたのか、奴も自分の腹に触り、ぬめった手で俺のをしごき始めた。
あ、それちょっとやばい。
気持ちいい。
なるべく快感に任せて体を動かすと
「キリコ、キリコ」
とうわごとのような声がして、急に腰をわしづかみにされた。
わ、わ、わ、わ。
だから俺はこっちの経験はほとんどなくて。
初心者にどういう動きを、こいつは。
く。
本当に乱暴な奴なんだから。
最後は絶対に痛い目にあう。
ぶつぶつ文句を言いながら、でも本当はそれほど嫌じゃない。
した後おたつく感じとか、意地を張るところとか、見ていて飽きない。
本当は、今日来てくれたのが嬉しかった。
どういう経緯でかは知らないけれど、そんな変な店に連れて行くような知り合いなんてろくなもんじゃないだろう。
何のために、とつい邪推したくなる。
男女を問わず性的な乱暴を受けたことが何度もあるのに、それは何故かとこいつは考えたこともないのだろうか。
奥手で頑固な所をなくせば、こいつはいい男なのだ。
本当に引く手あまただろうに。
そういう奴が、何かの時に他の奴じゃなく俺のところに来るのが、嬉しい。
あの四方八方に尖っている奴が俺に甘える表現なのだと思うと、抱かれるのくらい屁でもないと思ってしまう。
ま、そう思うのは一瞬だが。
本当にこいつ、何食ってきたんだ。
どれだけ元気なら気が済むんだ。
疲れているのに、うとうとするとちょっかいをかけられて参った。
「もう寝ろ」と頭を抱え込んで胸に引き寄せるとしばらくぶつぶつ言っていたが、そのうち静かになり、やがて寝息が聞こえてきた。
えー、すみません。
続きが書きたくなってしまったのです。