ぜんざい

 

朝起きたら急にぜんざいが食いたくなったので、作ることにした。

豆を煮るのを面倒くさがる向きは多いが、本当は簡単だ。

1袋の小豆を軽く洗ってポットに入れて、湯を注ぐ。

1時間位すれば豆はパンパンに膨らんでいるから、水を換えて大きめの鍋で煮ていく。

沸騰したらあとは弱火で、豆が軟らかくなるまで煮るだけだ。

新しい豆ならほとんどあくも出ないが、気になるなら最初の10分だけ取ればいい。

何となく豆の匂いがしてきたら、一粒取って親指と薬指ではさみ、つぶれるようならOK。

軟らかくなってから砂糖を入れると水分が出て、豆は少し固くなる。

最後に塩かしょうゆを少し入れると、甘みが締まる。

ちょっとくらい煮過ぎたって粒が壊れてつぶし餡になるくらい。

水分が多くてもさらさら食べればいいし、固めなら、もちに絡めて食べればいい。

市販のと違って自分の好みの甘さに仕立てられるので、たまに作って冷凍したりする。

 

出来立てを味見したらなかなかうまかったので、ブラックジャックに食べに来ないか連絡してみる。

どうせ「持って来い」と言われると思っていたので、「行く」と聞いて驚いた。

先日手を出してしまってから、奴は警戒しているらしく家に来ようとしなかったから。

楽観的に受け取ってもいいのだろうか。

それとももう大丈夫だろうなんて考えているんじゃないだろうな。

単にお嬢ちゃんに薄目で見られるのに耐えられなくなったとか。

まさか本当にぜんざいを食べるためだけに来るつもりでは…。

 

どうせ奴が来ればわかることなので、まだ熱い鍋を冷やすべく、シンクに水を張る。

煮豆は一度冷ますと味がしみこむのだ。

 

奴が来たのでハンガーを示し、鍋に戻る。

うまいこと冷めてるから、火を入れ直せばさっきよりうまいだろう。

そんなことを思いながら火をつけようとしたら、

「おい」

と呼ばれた。

 

「もしお前さんにその気があるなら、俺は用意をしてきたぜ」

振り向いた時には奴は俺の寝室の方に歩き出していた。

 

部屋の中で向かい合う。

奴は緊張のためかすごい目つきでにらんでいて、とてもではないがこれから色事に励むような雰囲気ではない。

「本当に甘いものとか、酒とか、口に入れとかなくていいのか」

と聞くと、

「せっかく家で浣腸してきたんだぞ。何か入れてまた溜まったらいやじゃないか!」

と身も蓋もないことを言う。

どうしてもそういうところは我慢できないらしい。

食べたらすぐ出るわけでもないと思うんだが。

 

まあ、そこまで据え膳になってくれるのなら、こちらも丁重にお迎えしよう。

最初にキスしても余計に緊張しそうだから、まずお互い脱ぐことにする。

素裸になって、相手を観察。

本当に傷が多いんだな。

あんなに多かったら、寒い日や雨の前には方々傷むだろう。

古い傷だけでなく、新しい傷も結構ある。

ヤバい客の噂もよく聞くけど、本当らしい。

 

そんなことを思っていたら、BJが俺の左肩に触ってきた。

「この弾傷、新しいな。」

そんなことはない。

もう半年も前だから、押した時に痛いだけだ。

俺は仕事を選んでいるが、それでも時たま遺産のごたごたに巻き込まれることはあり、八つ当たりに撃たれただけ。

俺なんかよりお前の方がもっとたくさん傷があるのに、そんなに優しく触れないでくれ。

 

たまらなくなって、ベッドに連れ込んだ。

 

わきの下からわき腹にかけて、押したり軽く引っ掻いたりしながら反応を見ていく。

奴がくすぐられて反応したのはここら辺だけだった。

でもくすぐられて反応するっていうのは、快感を得られる証拠。ほら。

一瞬ぴくりとしたところを重点的に確かめながら、前回唯一反応した耳にいたずらすると、体はそれも快感だとインプットしていく。

俺はゆっくりあいつの感じる領域を増やしていく。

わき腹に近い肋骨の辺り。

わきの下を指で強めに圧迫するのも反応あり。

そこが感じるようになったら手を大きく開いて、胸も一緒に揉みしだいて。

 

そっと下半身を触るとちゃんと反応していて

「気持ちいいか?」

と聞くと、奴は気持ちいいけど文句も言いたいような、複雑な顔をしている。

自分だけ反応するのが悔しいのだ。

「ほら、俺も」

と俺のに触らせてやると、もう硬くなってきているのにちょっと嬉しそうな、安心したような顔をした。

 

たぶん女は愛されて感じる生き物だが、男は相手が感じるのを見ても快感を得られる。

どんな生き物でも種を残すには相手を喜ばせる必要があったからだろう。

だから男同士のセックスの時も、自分の反応が相手を悦ばせていると知ると安心できるのだと思う。

 

奴が手を動かし始めたので、俺も応戦。

前回も思ったが、本当にへたくそだ。

同じものが自分にもついているのだから、もうちょっとツボを心得ていてもいいと思うのだが。

仕方ないのでわざと耳元をいたずらしながら時々指示を出しつつ、相手のを出してしまうのに専念する。

もうキスしても大丈夫かな。

奴が気持ちよくなって指が止まりがちになっていくと、逆に穏やかな快感が少しずつ溜まっていく。

 

はじける時の顔をじっくり堪能。

半分は奴のこの顔が見たくてセックスするんじゃないかと思う。

もちろん突っ込んで自分が気持ち良くなるのが一番の快感ではあるし、今まではそれだけで満足していたから決まった相手を作らなかったのだけれど。

 

放心した後、今回も俺が出していないのに気づいてむっとするのがおかしい。

本当に負けず嫌いだな。

ここで「へたくそ」なんてからかってみたい。

・・・だめだ、一生させてもらえないか、誰かに教わりにいくかしそうで怖い。

こいつ、妙なところ生真面目だからな。

 

今回は指を入れてもうつろな顔にはならなかった。

うまく感じられるように目をつぶるよう指示し、動かしながら表情をじっくり観察する。

空いている手で内腿に爪を立ててすっと引くと、ちゃんと中が反応する。

やっぱりこいつは全然不感症じゃない。

これからゆっくり教えていけば、お互いにもっと楽しめるようになるだろう。

サックを出して

「俺のにつけてくれよ」

と頼んだら、非常にぎこちない手つきでつけてくれた。

同じ手がオペの時にはあんなに繊細に動くとはまるきり信じられない手際だ。

 

中に入って、お互いにちょっと落ち着くのを待ち、さっきのわきの下を愛撫すると、中が緩やかに反応して。

その途端スイッチが切り替わったようにたがが外れた。

 

楽器を演奏するように、ブラックジャックを弾く。

上半身と下半身でばらばらの動きをしながら協調させて、奴の反応を引き出していく。

ああ。

気持ちいい。

ほら、もっとすがれよ。

声を出せ。

もだえても、泣き声あげても、行き着くところまでもう止めないから。

限界を訴えられて一度奴のだけ出してやったけど、俺はまだまだ。

全然足りない。

がつがつ食ってやる。

食って、食って、食って。

最後まで。

 

 

・・・・・・最後は全力疾走してしまった。

ティーンのガキじゃあるまいし。

お預けを食らった状態だったからだろうか。

我慢していたつもりはなかったのだが。

 

大丈夫だったかな、と覗いたら

「馬鹿野郎」

と言われた。

目元が真っ赤だ。

しばらくして起き上がったら腰の辺りが妙に軽くておかしかった。

 

適当に後始末をして、ぜんざいを温める。

運動をした後の甘いものは、格別にうまい。

テーブルに鍋ごと出して、各自でお替わり。

黙々と食べていて、ふと目が合った。

照れ笑い。

 

あ、今の顔、いいな。

目をそらす前の一瞬の顔。

ぜんざいと一緒に、何か温かいものをかみしめた。

 

 

 

たがが外れた後は「只今たがが外れています」とだけ書けばよかったかなとちょっと後悔しています。

否定でも肯定でも感想をいただけると、嬉しいです。

 

 

 

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