ドアを閉じられて締め出されてしまい、テーブル用の布巾で汚してしまったソファをごしごしこする。

ちょっと強引だったかな。

いや、強引だった。

自分に置き換えてみると、よくわかる。

初めてというのにほだされたんだろうが、甘い奴だ。

でも今回は奴の甘さにつけこもうと思う。

 

ソファは綺麗になったが、奴はまだ出てこない。

まだかな。

本当に出てくるのか。

あのまま朝までこもられるんじゃないかとやきもきしてしまう。

落ち着かなくて氷が溶けきった酒をあおる。

うえ、まずい。

 

奴は何しているんだ、と思った途端、具体的にどういうことをしているのかがすごく気になってくる。

見てみたい。

あのドア、開かないだろうか。

ドアに近づきそっと

「おい」

と言ってみた途端ばたんとドアが開き、鼻を強打した。

 

思わず鼻を押さえている俺に

「シーツが汚れるけど、ベッドでいいか」

と奴が言う。

「ベッド以外にどんな選択肢があるんだ?」

と聞くと

「いや、なんでもない、ベッドにしよう」

と俺の前をすたすた歩いていく。

「ほかに何があったんだ」

と再度聞いても

「いや、別に」

とかわされ、気になって仕方がないが、あまりしつこくして機嫌を損ねたら元も子もない。

ついていってベッドサイドに立っている奴の前に立ち、これからどうしようか考えていたら

「本当に経験、ないんだな」

と引きずり倒された。

 

お互いタオル1枚の姿なので、素肌がこすれあう。

正直言ってこういうふれあいにはまるきり免疫がないので、体中の血の巡りが異様に良くなっている。

顔どころでなく、全身がカーッとゆでだこになっているはず。

そんな俺の顔を覗き込み

「どうせなら楽しませろよ」

とおかしそうに笑いながらタオルをはがれた。

 

俺も手を伸ばして奴のを触り始めたが、なんか自分のをするのとは勝手が違ってどきどきする。

自分の手なら、ここを触ろうと思って大体どういう感じになるか予想したとおりに感じるものだが、俺のをいじっているのは奴なので、次にどう来るかがわからない。

なんか強烈過ぎる自慰をしているような。

しかもいっぱいいっぱいな俺がおかしいのか、奴が軽くキスしたりしてくるのだ。

そんなオプション、普段考えたこともない。

傷跡を辿られるとこそばゆいだけでなく、腰が重くなる。

「初めてならあせるだろうから、1回出しておくか」

と本格的に手を動かされ、もてあそばれているような気もしたが、お願いしますという選択肢しか俺にはなかった。

 

目をつぶって息を整えていると

「天下のブラックジャック先生が、かわいい顔をするもんだ」

とからかわれ、むっとして目を開けたら笑い方にいやみな感じが全然なく、余計に動悸が激しくなる。

思わずごくりとつばを飲んだら

「がっつかずにちゃんとほぐせよ」

と釘をさされた。

 

正直今までじかに直腸診をするなんて真似、よほどの緊急時でなければ考えられなかったのだが、欲望に背中を押されているからか、まったく躊躇する気持ちにならない。

奴の準備がいいのか、1、2本なら軽く入る。

ついどんな格好で準備していたのか考えてしまい、のぼせそうになったのであわてて指先に集中することにする。

前立腺を掠めたら奴の声が漏れたので、顔を覗き込んだら

「じろじろ見るな」

と手で顔を隠された。

隠されると余計見たくなるが、今ここで険悪になるのは避けたい。

でもちょっと悔しいので抗議の意味で手首のあたりを軽く噛んだら、うめき声と共に手がはずされ

「やるじゃないか、初心者の癖に」

とその手で顔をなでられた。

隠れていた目を見た途端体の奥がうずき、あわてて目をそらす。

やはり初心者は寄り道する時間などなさそうだ。

 

なのに奴は

「そうだコンドーム、俺がつけてやろうか」

なんて言うのだ。

「いや、ほぐしている最中だし」

と言っても

「もうお前、でかくなっているじゃないか。準備ができた途端余裕がなくなった、なんて言われたくないからな」

と手を出されるが、ここにはない。

テーブルの上に忘れてきたのに気がつき、あわてて取りにいく。

 

袋を破いて中を取り出しながら、奴はふと思いついたように

「どうせなら面白い付け方をしてやろう」

と俺を見てにやりと笑い、中身を縦にくわえると、俺の中心に顔を落として器用に唇で巻き下ろしていった。

最後にほんの少し甘噛みされて、もしかして実はとんでもなくもてあそばれているのでは、という気分になる。

 

「そろそろ大丈夫だと思う」

と言われ、サックの上にもリンスをたらし、傷つけないように気をつけつつ入れていく。

確かに俺が押し入っているのだが、どう考えてもリードされているのは俺の方だ。

1から10まで教わってしまっている。

いつもあんなに口論ばかりしてきたのに、こいつは何で俺を受け入れてくれているんだろう。

表情を変えまいとしているようだが、それでも痛みを我慢しているようなので多分男相手は久々のはず。

まさか初めてということはないだろう。

それとも男も女もやり方はそんなに違わないのだろうか。

 

後はもうどんなだったか詳細は飛んだ。

締め付けられて、痛いけど気持ちよくて、熱くて、動くと奴が艶めいて見えて、それで余計に熱くなった。

多分そんなに保たなかったんじゃないかと思うし、奴をうまく感じさせられなかったみたいだけれど。

でも

「男相手に童貞喪失した気分はどうだ?」

とからかう奴の顔は結構楽しそうで、俺が

「よくわからなかったからもう一度」

と言っても

「悪趣味な奴」

とつぶやいただけで、拒否はされなかった。

 

 

 

テーマは「お兄さんが教えてあげよう」でしたが、難しかった・・・

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