俺はオーストラリアのケアンズにいた。

患者のオペは、機材の確保の関係で二日後と決まっている。

今日の診察も、他の医師との打ち合わせも終わってしまった。

できることもないので、町に繰り出したのだ。

 

昼を回っていたのでとりあえず昼食を、と思って歩くが、昨日目に入ったすし屋はどこだろう。

どうしても見つからず、結局カバブ屋で腹をごまかすことにしたが、さすがオーストラリア、カバブもでかい。

何しろチャパティ(分厚いクレープみたいなもの)二枚を並べて肉を乗せ、その上にキャベツをドサッ、たまねぎとパセリをドサドサッと手づかみで乗せるのだ。

その上にソースをかけて巻くと、直径五センチほどの筒になる。

これを少しトーストしてから紙を巻いて手渡ししてくれるのだが、口をあんぐり開けてもなかなか頬張れなくて困った。

これじゃ丸かぶり寿司じゃないか。

でかすぎだ、うまいけど。

しかし口を限界まで開けさせるこの大きさはどこかで覚えがある。

どこだったかな。

 

満腹して歩いていると、ツアー会社の看板にシューティングの文字が踊っているのが目に入った。

銃か。

実は俺、家に拳銃を隠し持っている。

以前、ごろつきが置いていったのだ。

弾もそんなにないし、ほぼ無用の長物ではあるが、護身用にいる事があるかもしれないので秘密の隠し場所に入れている。

けど、俺、いざという時に撃てるのかな。

今まで撃ったことがないとは言わないが、毎回見よう見真似で撃っているだけ。

何故うまく当っているのかわからないくらいなのだ。

ビギナーズラックもそろそろ尽きてくる頃のはずだし、射撃場というものにも興味はある。

明日はまだオペじゃないから、万一筋肉痛になっても大丈夫だし、何のかの言ってもとにかく暇だ。

ちょっと試してみることにした。

 

・・・

 

奴はなかなかいいホテルに泊まっていた。

寝室が二つもあるコンドミニアムだ。

リビングダイニングも相撲が取れそうなほど広い。

海岸に面しているので、眺めもいいはず。

あいにく夜の今はライトアップされた庭のプールで泳ぐ人間しか見えないだろうが、広いベランダには白いテーブルとビーチチェアが恥ずかしげもなく並んでいる。

「しばらく奥地に行っていたから、ちょっとのんびりしようと思ってな。観光案内所で値段の割りにいいホテルを聞いたら、ここを勧められたのさ。俺は海が見えればそれでいいといったんだがね」

というその値段を聞くと、確かにそんなに高くない。

いや、一人で泊まるには少々高いが、二人で割り勘にすれば俺の今のホテル代より安い。

なんたって風呂が円形のジャグジーだし。

俺のホテルなんて、シャワーしかないんだから。

 

ま、そこらの交渉は後回しにして、とりあえず俺たちはお互いを料理し、味わうことに熱中した。

奴のカバブは滑らかなので昼間の奴より食いつきやすいが、まさか歯を立てるわけに行かない。

だがスパイシーなソースがかかっているわけでもないのに、その熱さだけで俺を夢中にさせる魔力がある。