翌日からはリハビリ開始。
本当はまだ導尿したままでもいいかと思ったのだが、俺に下の世話をされるのは気詰まりだったようなので、本人の意思を尊重した。
腹の傷をかばい、壁を伝って歩くのが心配でならない。
奴のプライドを傷つけない程度の距離を保ちつつも、どうしても伺ってしまう。
とにかく奴に触りたくて、清拭はとても丁寧にした。
最初は固く緊張した体が、だんだん緩んでいく。
髪の毛は多めのヘアートニックでよくマッサージして、汚れの浮いたところを丁寧に熱いタオルで拭いた。
シャンプーできない間の急場しのぎだが、結構さっぱりするのだ。
髪の毛は自分でも気持ち悪かったのか、すごく気持ちよさそうな顔をしている。
リラックスして、目をつぶって、満足げにため息をついて。
そんな顔を見るとなぜか気恥ずかしくなり、目のやり場に困る。
こいつは医者の顔をして接すれば、無防備に体を投げ出すのだ。
丁寧にマッサージをしながら、俺の邪念が手を通して流れていかないかとひやひやした。
膝や股関節のマッサージと称して両足を抱えてのしかかるとき、あの時を思い出して鼓動が跳ね上がった。
あいつも思い出すのかほんの少し恥じらいが入るのを
「力を抜けよ」
と邪気のない振りをして、丁寧に屈伸させる。
もともと体が固いのか、寝たきりだったせいで関節が固まってしまったのか。
驚くほど可動範囲が少ないところを、少しずつほぐしていく。
目をつぶったままうめくその声を、その表情を、食い入るように見た。
俺は趣味がおかしいのかもしれない。
そう思いながらも、奴の痴態を想像してはこっそり抜いた。
・・・・・・
そう思い惑っていても足は勝手に動き、気づくと奴の部屋に入るところだった。
ハンガーを放られ、反射的に受け取る。
「上着を掛けろ」
と言われれば、応じざるをえない。
ハンガーに掛けて持っていくとあいつの横に掛けられ、それをぼんやり見ていたら
「タイも」
と抜かれた。
小物掛けにかけた後、そのままボタンを二、三個外され我に返る。
あわてて襟元を合わせたら
「そのまま洗濯してやるぜ」
とにやりとされた。
「ランドリーサービスに出せば、明日の九時には戻ってくる。それまでお前は逃げられないし一石二鳥だな。どうせそれまでゆっくりしていくだろう」
と頬をなでられ、本格的に逃げ場がなくなったと知る。
「先にシャワーを使わせろ」
とシャツを放り、逃げるようにシャワー室に入った。
服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びようとするとノックがして
「洗濯に出す」
と下着まで持ち去られてしまった。
絶体絶命の気分。